2026年、この市場で何かが変わりました。しかもセラミックス業界の側で起きた変化ではありません。AIデータセンターが送電網への接続を待てず、固体酸化物形燃料電池(SOFC)をGW単位で購入し始めたのです。2025年10月から2026年1月までに、データセンター向け燃料電池の拘束力ある契約が約76.5億ドル分締結されました。2026年6月30日には、Bloom EnergyとBrookfieldがパートナーシップを50億ドルから250億ドルへ拡大しました。1月にはAmerican Electric Powerが最大1GWのオプションを26.5億ドルで行使し、ワイオミング州の1.8GWキャンパスの第一段階を支えています。
電解質粉末を売る立場からすれば、次に来る問いは当然、それがセルの中に入る材料の需要に何をもたらすのか、です。この問いにはすでに複数の当事者がトン数で公に答えており、その答えは互いに一致していません。本稿が扱うのは、なぜ食い違うのか、そしてそれを決着させるには何を知る必要があるのか、です。山にもう一つ数字を積むための記事ではありません。
この話がそもそも材料購買担当者に届く理由
固体酸化物形燃料電池の電解質には、酸素イオンをよく通し、電子はほとんど通さないことが求められます。イットリア安定化ジルコニア(YSZ)が長年の標準です。スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)は中温域での導電率が優れており、そのトレードオフはYSZとScSZの比較で詳しく扱いました。
データセンターの話の中心にいる企業については、組成は推測の問題ではありません。Bloom Energyは、ドープされたスカンジア安定化ジルコニア電解質組成について米国の登録特許群を保有しています。スカンジアで安定化したジルコニアに、マグネシア、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化ガリウムのうち少なくとも一つを加え、セリアを任意で含むもので、ある特許群ではスカンジアと酸化インジウムを合わせて10~13 mol%と規定しています。特許はその企業が主張した内容を示すものであって、今日出荷されているセルに入っているものを必ずしも示しません。その点をごまかすつもりはありません。ただし方向性は推測ではなく開示されています。これはスカンジウムを含む電解質技術です。
データセンターの電力の話が粉末購買担当者の机に載る理由は、まさにそこにあります。スカンジウムは市場の厚い汎用原料ではありません。世界の生産量は酸化スカンジウム換算で年40トン程度であり、専用鉱山ではなく副産物回収から出てきます。その事情はスカンジウムがなぜこれほど希少なのかを扱った記事に整理しました。GWで測られる需要ショックが、数十トンで測られる供給基盤とぶつかることになります。
出回っている数値と、その隔たり
公表されている主張を、平均を取らずに出所とともにそのまま並べます。
左の列より先に右の列を読んでください。二つは企業が自社の供給状況を説明したものです。二つは市場予測です。一つは、基礎となる統計機関が確定的な公表を避けている推計です。これらは同じ種類の数字ではなく、平均を取ったところで何の意味も残りません。
答えている問いも異なります。「当社の供給網は25GWを支えられる」は調達能力についての言明であって、「40トンのスカンジウムから25GW分のセルが作れる」という主張とは別物です。ある供給網がその物量を支えられるのだとすれば、40トンという数字に現在は数えられていない副産物の流れを通じてそうしている可能性があります。実際この開示は、チタン、ニッケル、コバルト、ボーキサイト、ウランの処理を供給源として名指しし、まさにそのことを述べています。
その計算に実際に必要なもの
ここでGWをトンに換算するつもりはありません。その理由ははっきり述べておく価値があります。この換算は一行計算のように見えて、そうではないからです。
設置容量1GWから酸化スカンジウムの質量にたどり着くには、最低限、次のものが必要です。
- 出力密度。 有効セル面積1cm²あたりのワットで、ピークではなくシステムが実際に運転する動作点での値です。1GWに必要なセル面積がこれで決まります。
- 電解質の厚さ。 燃料極支持型の薄膜設計は一桁から十数マイクロメートル、電解質支持型はその一桁上の厚さになります。これだけで答えが10倍以上動きます。
- スカンジアの装填量。 mol%を質量分率に換算し、さらにスカンジア中のスカンジウム分率を取ります。ここで酸化物と元素の間の換算が必要になり、向きを逆にする誤りはよくあります。あらゆるCOAに現れるのと同じ酸化物↔元素の問題です。
- 焼結後の電解質の密度。 体積を質量に変えるために必要です。
- 製造歩留まり。 テープキャスティング、スクリーン印刷、焼結で失われる分を含みます。購入した粉末が、そのままセルに載って出荷される粉末ではありません。
- 契約期間中のスタック交換頻度。 20年の電力契約でスタックを定期交換すれば、一度きりの建設よりも多くの材料を消費します。しかも交換間隔は商業条件であって、公開情報ではありません。
この六つはいずれも非公開であるか、設計によって桁単位で変わるかのどちらかです。他の入力を一切変えずに電解質の厚さを60 µmから6 µmにするだけで、質量は10分の1になります。名目上は同じ技術について公表値が年200トンから1,000トンまで開くのは、このためです。市場についての見解の相違ではなく前提についての見解の相違であり、どの出所も自らの前提を示していません。
データセンター建設に伴うスカンジウムのトン数を誰かが提示してきたとき、有用な問いはその数字が大きいか小さいかではありません。上の六つの入力にどの値を置き、その値をどこから得たのか、です。
購買担当者が妥当に結論づけられること
不確実性を通り抜けて残るものが三つあります。
規模は分からなくても、方向は疑いようがありません。 SOFCのスカンジウム需要が年200トンであれ1,000トンであれ、現在の生産量である年約40トンに対してはどちらも大きい値です。そして副産物回収に基づく供給基盤は、採掘される汎用原料のようには価格に反応しません。事業者の主力製品はチタンやニッケルであり、スカンジウムの回収は独自の設備投資とリードタイムを伴う副次的な判断だからです。
供給多元化の主張も、他のスペック上の主張と同じだけの検証に値します。 「単一の供給者や国家が供給を支配していない」というのは、副産物として調達される材料についてメーカーが言うこととしては妥当であり、イットリウムの状況とは実質的に異なります。イットリウムには2025年4月の中国の許可制が直接効いており、その分岐は希土類管理を追った記事で辿りました。スカンジウムも同じMOFCOM公告の下にあり、これは別途扱っています。
ScSZを買う立場で最初に体感する制約は、価格ではありません。 認証です。スカンジアの調達先が変わる、あるいはドーパントの組み合わせが変わると、焼結挙動と長期の相安定性が変わり、電解質を再認証するには数か月単位を要します。イットリウムの混乱で見えたのと同じ構図です。効いてきた制約は価格の行ではなく、再認証にかかる時間でした。
この材料を規定する立場でやるべき実務は、今回のニュースで変わりません。代替品が黙って入り込めないように仕様書を書いてください。安定化剤とそのmol%を書き、ドーパントを名指しし、測定方法を記載し、ロットが出荷された後ではなく出荷される前に量産ロットの成績書を要求してください。その条件で実際に見積もりを出せるのがどこかは、供給社の地形で扱っています。
よくあるご質問
AIデータセンターの建設はスカンジウム価格の上昇を意味しますか?
方向と規模は別の問いです。年約40トンの生産量しかない副産物回収の材料に需要圧力がかかること自体は現実です。ただしスカンジウムは2025年4月の輸出管理の後にすでに大きく再評価されており、そこからさらに動くかどうかは、需要期待がどれだけすでに価格に織り込まれているか、そしてチタンやニッケルの流れからの回収能力が拡大するかどうかに依存します。後者は、主力製品が別にある生産者による設備投資判断です。私たちは根拠のある価格予測を持っておらず、提示もしません。
発表されたGW数から、自分でスカンジウム需要を計算できますか?
上に挙げた六つの入力が手元にあれば可能ですが、その大半は非公開です。出力密度、電解質の厚さ、スカンジア装填量、焼結密度、歩留まり、スタック交換頻度が揃えば、計算自体は単純な算術です。それらがなければ、出てくる数字はGWが語る値ではなく、前提が語る値です。
これはYSZにも影響しますか、それともScSZだけですか?
両方ですが、影響の仕方が異なります。同じ役目をめぐる代替の電解質なので、一方の需要はもう一方と関わり合いますし、どちらを選ぶかは比較記事で扱った工学上のトレードオフです。ただし供給リスクの形は同じではありません。イットリウムは商業物量の規模で中国の輸出許可の下にあり、スカンジウムは副産物供給の問題です。両方にさらされているプログラムは、互いに無関係な二つの故障モードにさらされていることになります。
すべての固体酸化物形燃料電池がスカンジウムを使いますか?
いいえ。YSZが長年の標準電解質であり続けており、多くのシステムがそれを使っています。スカンジア安定化ジルコニアは中温域の導電率を買い、その代金を価格と相安定性で払います。どちらを使うかはメーカーごとの設計判断であり、公表されていない場合に私たちが決めつけることはしません。
この記事は、公表されたトン数が間違っていると言っているのですか?
いいえ。比較できない、と言っています。それぞれは自らの前提の下では内部的に妥当かもしれません。問題は、その前提が数値と並べて公表されていないため、突き合わせることも検証することもできない点です。測定値としてではなく、入力が隠されたシナリオとして扱ってください。
参考資料(公開情報)
- Bloom Energyの酸化スカンジウム供給網に関する開示(2026年7月7日、2026年7月14日報道)— 年間25GWの生産を支える供給、チタン・ニッケル・コバルト・ボーキサイト・ウラン処理からの副産物調達、チタン処理だけで「数百トン」回収可能。
- 米国特許群、Bloom Energy Corporation — ドープされたスカンジア安定化ジルコニア電解質組成(スカンジアとマグネシア、酸化亜鉛、酸化インジウムまたは酸化ガリウム;セリアは任意;ある特許群ではスカンジアと酸化インジウムを合わせて10~13 mol%)。
- 報じられたデータセンター向け燃料電池契約 — 2025年10月~2026年1月に約76.5億ドル、Bloom Energy・Brookfieldのパートナーシップが50億ドルから250億ドルへ拡大(2026年6月30日)、American Electric Powerが最大1GWのオプションを26.5億ドルで行使(2026年1月)、CrusoeとTallgrassが開発する1.8GWキャンパスを支えるもの。
- SOFC向け酸化スカンジウム需要の仮定として年200~300トン、および年1,000トンに達するとした過去の予測を引用した市場論評。
- 米国地質調査所(USGS)Mineral Commodity Summaries — スカンジウム(地殻存在量、回収経路;確定した世界生産総量は未公表)。
本稿の数値は執筆時点の報道に基づくものであり、この分野は週単位で動いています。契約金額と生産能力に関する主張は当事者自身の発表であって、私たちが独立に検証したものではありません。
流通しているトン数の数字は互いに突き合わせられないため、買い手が手にできる最も確かな数字は、メーカーが見積書に書く数字です。Nami Tech Solutions(NTS)はそのメーカーへ直接、相手の言語で、一つの書面仕様 — 安定化剤とmol%、ドーパントの明記、測定方法 — を示して当たるため、見積は仮定の積み上げではなく比較できる形で返ってきます。